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【小説紹介・レビュー】黒鷺は花を食む

 

【オススメ度】 ★★★

【舞台設定・ジャンル】 高校生、同年代。王道百合小説。

【百合度】 恋愛

【オススメポイント】 ザ・青春。王道ながら一人称視点の語りが読みやすく飽きさせない。キャラクター設定がしっかりしているので、誰が喋っているのかすぐ解る。

 

 

これぞ王道百合、と言いきってしまえるほどの作品。

百合作品をある程度読んできているが、大きくわけて二つに分けられると考えている。作品の世界において、同性愛が一般的である作品とそうでない作品だ。

前者の作品は、百合における一番大きな壁である「世間一般の反応」を気にする必要がないので、登場人物同士のいざこざはあれど、そこまで暗い雰囲気にはならず百合そのものに没頭できる。

対して後者の作品だと、否が応でも周囲の好奇の目に晒される。登場人物はその世間一般とのズレに悩み傷つきながら、それでもなお自分たちの気持ちを信じて寄り添っていく。暗めの展開が必ずと言っていいほど大きな山場として描かれるが、読後は大きなカタルシスを得られる。

本作品は後者である。

近年はLGBTなどと言って同性愛についても一定の理解を得られる社会となっている。しかし、いつの時代もマイノリティーを理解しない・許さない層は必ず存在する。まして、それが思春期の少女であるならば、本人は奇異の目で見られ理解されず、周囲は異物を排除するかの如く攻撃を始める。そんな経験をしてきた少女が、一人の少女と出会い、惹かれ合っていく様はとても微笑ましく頬が緩むことも多かったが、やはり過去の出来事から気持ちを押し殺してしまっているという独白が合間合間に書かれていて読んでいて切なくなった。

少女たちの心の機微を静かに、丁寧に、そして繊細に綴っている作品。初めての百合小説にオススメしたい。